開催趣旨

 50年ほど前にローマクラブ報告において警告された地球温暖化による気候変動は、いまや現実のものとなり、世界各地において、巨大な台風や、異常高温、干ばつ、洪水、さらには火災といった、かつてない規模のあらゆる災害を引き起こし、人間を含む多くの命が奪われています。

 過去50年の間、この温暖化に対して地域と、そして国境を越えて様々な会議が開催され、対策が考えられ、そして実際に実行されてきましたが、残念ながら、気候変動は日常の生活の中でも実際に感じられ、観察されるようになり、それに歩調を合わせて、予測不能とも言える自然災害は、私たちの未来に大きな影を落としています。

 このシンポジウムが目指すのは、回答を提示することではありません。地球温暖化の要因とそれらによって気候変動が生じるメカニズム、さらには自然災害との関係性について理解を深めること。そして、その災害を予防し、あるいはその被害を最小限に抑える方法や、最先端の見識を提示すると同時に、私たちがなぜこのような重大で致命的な問題をないがしろにしたままでいるのかについて討議を行うことで、参加者一人一人が行動を前提とした自らの回答を出すための方向性を示すことにあります。

 私たちは現在大きな変動の時期にあります。地球の歴史を振り返り、過去およそ500年にわたって拠り所としてきた、経済的発展とそれを支えてきた科学及び技術の発展に基づく世界観から、生命をより豊かにすることを第一義とした世界観へと移行し、それに基づく意識の変革と、知識の深化を目指すべき時にあるのではないでしょうか。そして、そのような変革は、未来を希望あるものにしていくという人間本来の役割に気づいたすべての人々が参加することで可能になるのもまた、明らかでしょう。

 幸いなことに、この気候変動がもたらしている危機については、世界中の人々がその認識を共有し、具体的な行動を起こしています。そのような行動を継続し、より力強いものにしていくためにも、この危機について基本的な理解とそれに基づく方法論を提示し、行動の拠点となる人と地域を具体化していくことが、今私たちが取り組むべき緊急の課題ではないかと思い、本シンポジウムの開催に至ります。

気候変動による自然災害への対策を考えるシンポジウム実行委員会
2020年3月